1997年7月が私の初ベトナム。
就職して仕事にも少し慣れたころ、学生時代の友達に誘われてなんとなく気になっていたベトナムを訪れました。
当時のベトナムは、アジア独特の喧騒とまだ戦争の傷跡が残る貧しい国で、若かった私はたくさんのカルチャーショックで胸が苦しくなるようなこともいっぱいありました。
そこで出会ったベトナムの人たちはそれぞれに不思議な魅力に溢れていて、フランス統治時代の面影が残るクラシカルな建物とアジアの鮮やかで瑞々しい色合いと、いろいろな人間模様がごちゃまぜの混沌とした街で、笑ったり怒ったりしながら、私はすっかりベトナムに引き込まれてしまいました。
それからは、彼らのことが知りたくてベトナムという国に近づきたくて、言葉を勉強したり何度も旅を重ねたりしました。
雑貨好きだった私の旅時間の楽しみのひとつが雑貨屋巡りでした。あちこち歩きまわって好きなものを見つけたりオーダーメイドでオリジナルを作ってもらったりしていたそんな些細な楽しみが、このお店のはじまりです。
世界では段々少なくなっていた手仕事から生み出される、ヨーロッパ風の洗練されたデザインやアジアらしいちょっといびつでキッチュな雑貨たちは、人の温度を感じられるノスタルジックな魅力があって、大好きになりました。
いろいろな人がひとつずつ繋げてくれたたくさんの出会いと偶然の中で豊かな経験をさせてもらいました。
楽しいうまくいくことばかりではなく、異文化はたくさんのかけ違いや衝突もありましたが、お互いの凸凹でここまでこれたのかなと思います。
私にとってベトナムは、いろいろな文化や時代が絶妙なバランスで存在する街です。
ベトナムの街と雑貨にときめいたあの頃を原点に、ベトナムが生み出したかわいいもの、それをベースに現地の職人さんと作り出したかわいいもの、そんな雑貨たちを通してベトナムを感じてもらえたらいいなと思います。
そして、このお店を続けることが、時代の流れの中で大好きな雑貨や職人さんたちがベトナムから消えてしまわないような、そんな力に少しだけでもなれたらいいなと思います。